茨城県小美玉市に生まれ育った自分は、海といえば小学生の頃に海水浴や水族館に連れて行ってもらった茨城県大洗町の大洗海岸やひたちなか市の阿字ヶ浦海岸でした。子供の自分にとって海は滅多に目にすることのできない特別な場所。水族館の帰りに売店で貝殻の詰め合わせを買ってもらうのが楽しみでなりませんでした。社会人になり、仕事先の転勤で引っ越した地は宮城県石巻市、青森県八戸市、宮城県仙台市、そして福島県いわき市と、いずれも海が近い街でした。子供の頃憧れていた海が身近にある暮らしですが、その美しい海をほとんど写真に残すことなく過ごしてしまいました。
2008年9月風景写真を撮り始めた場所。それがいわき市小名浜の三崎公園にそびえるいわきマリンタワー最上部スカイデッキでした。ここは遮るガラスもなく強風です。高所恐怖症の方にしてみたら辛抱たまらない展望塔ですが、ここから見えた小名浜の青い海と緑の芝生の風景が本当に美しかったのです。あまりにもすばらしい秋晴れだったので、まだ昇ったことのないマリンタワーに行ってみようという軽い気持ちだったのですが、八戸市で暮らしていた時に生まれた3才の娘を撮ろうと買ったコンパクトデジカメを持っていったことが幸いしました。
自分は転勤が多い。それならば娘が育った地域がこんなにも美しい場所だったんだよと、いつか教えてあげたい。それが風景写真を撮り始めたきっかけです。
2010年4月、いわきマリンタワースカイデッキ、同じ場所から満開の桜を入れて撮影しました。いわき市には海と桜が同時に楽しめるスポットがたくさんあります。浜通りならではの桜風景には、自分にとって特別な海という存在が加わるのです。
小名浜古湊の富ヶ浦公園からは桜と松、そして小名浜港を望む絶景。
小名浜臨海工業団地、東緑地公園からは、桜を愛でながら天然記念物「照島」が望める絶景。
「吹く風を なこその関と思えども 道も狭に散る 山桜かな」
源義家の歌が有名な勿来の関跡公園では山桜と海の絶景。