三春の滝桜 Panasonic DMC-FX9 44mm F2.8 1.3秒 ISO80 WBオート
【桜随筆3】日本一の桜を体感
浜通りの名所、夜ノ森の桜並木に圧倒された2009年4月。他にも絶対に見に行かねばと思っていた桜名所がありました。それが福島県が誇る「三春の滝桜」です。樹齢1000年以上といわれる枝垂れ桜で、日本三大桜に数えられている知名度全国区の一本桜です。この年は12年ぶりにライトアップ再開という絶好の機会に恵まれました。
名物となっている「滝桜渋滞」を初体験しながらも19時に到着。はじめて目にする日本一の桜。とにかくそのサイズと観覧客の多さに圧倒されました。
先日、世界の山を愛し登山を趣味とされている方が「何事も突き詰めていくと自然な姿が最も美しく思えるようになるのかもしれません」とおっしゃっていましたが、風景写真を撮り始めて数年経った今、この言葉はすごく腑に落ちました。実際6年間に亘って桜を撮り続けてきた結果、人工的にライトアップされた桜よりも、朝陽が照らす桜や雨に濡れた桜などに魅力を感じてきました。しかし風景写真を撮り始めて1年にも満たないこの頃の自分は、ライトアップという華やかなイベントと、夜空に浮かび上がる派手な桜の存在に魅了されてました。
また逆に最近では水戸の桜を愛する方から「水戸の黄門様は桜の近くで篝火を焚いて夜桜を楽しんだんですよ」という話を聞いて、なるほど、ライトアップもそれはそれですばらしい花見の手段であり、人々が桜を愛でる気持ちは同じなんだと、大事なことに気付かされたりもしました。
結局この頃の自分は、良くも悪くも桜や自然風景をそこまで深く捉えていなかったというのが本当のところでしょうか。そういったことは考えずに、ただ目の前の風景に感動してシャッターを切っていた。言ってみればごく普通だけれど、とても大切な感覚であり、視野が狭くなっていた最近の自分が恥ずかしくなりました。
滝桜では「一本桜」を撮影しているという感覚はありませんでした。並木とか一本桜という枠では捉えきれないほど大きな何かであり、「滝桜」という唯一無二の存在なのです。
PanasonicのコンパクトデジカメLUMIXでの撮影。当時の写真を今見てもライカレンズは伊達じゃないと言えます。初心者にはオートでも十分な描写力ではないでしょうか。
しかしコンパクトデジカメの限界を感じ始めたのもこの頃でした。有名風景ブロガーさんなどが掲載している滝桜の写真は、どれもが高解像度で花びらの一枚一枚までもが鮮明に写っていました。またライトアップの色合いについても、肉眼で見た状況よりも薄紅色が強く、作品としてクオリティーが高いと感じました。
それに比べて自分の写真は、花びらがくっついているような描写で色合いも単調です。今思えばホワイトバランスや絞り値の調整などで、もうちょっとクオリティーを詰めることができたかもしれませんが、デジカメのシーン選択モードで撮影する程度の知識しかなく、また目の前に広がる圧巻の風景に気が焦ってばかりの状況では、それも無理な話でした。
この焦点距離で絞り値2.8はありえないなと、カメラの仕組みがわかってきた今だからこそ思います。